100年のエコーズ

 

軍港キールでUボートの製造に関わったELACは、1945年 それまでの軍需産業に別れを告げ、戦時下に心を満たすことが出来なかった音楽愛好家のためにオーディオ機器製造を開始した。しのぎを削ったソナー開発で培った技術を糧に、画期的なメカを搭載した自動演奏機能のレコードチェンジャー・プレーヤーや 1950年代にはパテント取得に至る「MMカートリッジ」の開発製造が進められた。未だかつてなかったモノに真っ向から取り組み創り出された数々の製品は、ギミックで終わらない高度な技術により　音楽愛好家に至福の時を蘇らせる名品となった。ELACは文字通り平和産業の道を突き進み、さらに祖国が失いかけていたアイデンティティをも少しずつ取り戻していった。
そんなELACの製品を私達が日本に紹介することになったのは1998年のこと。戦後栄華を極めたELACはCDの登場で低迷期を迎え 日本の代理店を失っていた。そのとき我々が初めて目にした黄色いヒダのあるドライバー・ユニットを彼らはJETと呼んでいた。

ELACは間もなく創業100周年の節目を迎える。その間には様々な出来事があって、その紆余曲折全てを知る人間はもういないかも知れない。しかし創業から受け継がれる独創の精神は今も息づいている。これからもその既製を覆すモノづくりは オーディオシーンにとって刺激的な存在であり続けるだろう。間も無く老舗の称号が与えられるELACとはそんなブランドだ。

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